• 2024-03-16

抗菌薬(抗生物質)について③

前回は、発熱や咳、鼻水といった感染症を疑う症状が出た際、ほとんどの場合抗菌薬は不要というお話でした。抗菌薬(抗生物質)について② – たかみこどもクリニックブログ (takami-kodomo.com)

今回は、抗菌薬を使用することのデメリットについてお話しします。

①下痢:人間の腸には100兆個もの腸内細菌が住みついています。抗菌薬を飲むと、これらの腸内細菌をやっつけてしまい、その結果下痢が起こります。

②アレルギー疾患発症率の増加、発達への影響:小児期の抗菌薬使用が、長期的にアレルギー疾患等の病気を起こしやすくすることが以前から報告されていました。160の研究結果をまとめたシステマティックレビューが2022年に発表されました。Duong QA, et al. J Infect. 2022;85:213-300.

この結果、小児期の抗菌薬使用は、アトピー性皮膚炎食物アレルギー喘息といったアレルギー疾患だけでなく、肥満自閉症スペクトラム障害若年性特発性関節炎乾癬の発症の増加と関連していました。

③抗菌薬アレルギー(発疹):抗菌薬は比較的アレルギー反応を起こしやすい薬です。抗菌薬が原因で様々な発疹やときに発熱することもあります。ひどいときには入院することもあり、姫路赤十字病院勤務時代にはときどき入院患者さんを診ていました。アレルギー症状が出ると、その症状で困ることに加え、今後同じ抗菌薬や同じグループの抗菌薬は使用できなくなります。

問題は、抗菌薬にアレルギーがある、という申告のうち、真のアレルギーは10~20%しかなく、残りの80~90%は本当は抗菌薬にアレルギーがないのです。こどもでは、じんま疹や発疹は薬と関係なく、よく見られる症状で、かぜなどウイルス感染のときには特によく見られます。抗菌薬を飲んでじんま疹や発疹が出たと言われると、実際にはアレルギーではない可能性が高くても、今後本当に必要になったときに抗菌薬が使用できなくなってしまいます。

④特定の抗菌薬による副作用一部を紹介します

・低血糖:ピボキシル基というものがついた抗菌薬を飲むと低血糖を起こすことがあります。姫路赤十字病院勤務時代にこの抗菌薬により低血糖でけいれんや意識がなくなり入院してきたお子さんを数名経験しました。ひどいと後遺症を残すこともあります。

・歯の着色:テトラサイクリン系の抗菌薬を歯が出来上がる前に使用すると永久歯に色がついてしまうため使用してはいけません。

⑤熱の原因が分からなくなる:細菌感染で入院する場合、どこに菌が感染しているかは重要です。感染が起こっている部位によって、細菌性髄膜炎、菌血症、肺炎、尿路感染症など病名が変わります。入院する際に、血液や尿、髄液などに菌がいるかどうか培養検査を行います。菌が検出されることで病気の診断や治療が決まります。入院前に抗菌薬が使用されていると、培養検査で菌が検出されなくなってしまい、診断や治療に影響を与えます。

⑥耐性菌:普段気にされないかもしれませんが、大きな問題です。例えば、マクロライド系(クラリスロマイシンなど)抗菌薬はマイコプラズマやピロリ菌の治療で使用されますが、日本ではかぜを含む不適切な処方が多すぎたため、耐性菌が増えています。ブドウ球菌や大腸菌など様々な菌で耐性菌が出てきており、免疫が落ちた人や高齢者では亡くなることもあります。近年、国も大きな問題と考え対策を行っていますかしこく治して、明日につなぐ~抗菌薬を上手に使って薬剤耐性(AMR)対策~ (ncgm.go.jp)。一般の方向けの抗菌薬や感染症の説明がありますので、ご興味があればご覧になって下さい。

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