• 2023-05-31

てんかんと学校プール

まだ5月なのに梅雨入りしたようです。夏が近くなると、てんかんのお子さんが学校でプールの授業に参加できるかと質問されます。結論から書きますと、ほぼ全員がプールの授業に参加しています。ほぼと書いたのは、学校が拒否するケースがまれにあるからです。

①プール内でてんかん発作が起こりやすくなるか

これまで1,000名以上のてんかん患者さんを診てきましたが、姫路赤十字病院で勤務した15年間、学校プールの授業中にてんかん発作が起こったという事例はほぼ記憶にありません。一般的にプールではてんかん発作は起こりにくいようです。

②学校プールで、てんかん発作による死亡事例があるか

学校管理下における水泳事故の報告書があり、毎年何名か亡くなられています。この中で、てんかん発作が原因とされているものは見つけられませんでした。

学校管理下における水泳時の死亡事故<95DB8C9291CC88E78E8096538E968CCC2E786C7378> (shinnosuke0720.net)

学校における水泳事故防止必携suiei2018_0.pdf (jpnsport.go.jp)

③プール内でてんかん発作があった場合にどうすれば良いか

とにかく、早く気付くことが重要です。体を支え水面から顔を出し、呼吸ができるようにしましょう。慌てず人を呼び、プールから上げてプールサイドに寝かせて下さい。てんかん発作がおさまり呼吸が安定していれば大丈夫ですが、そうでない場合は救急要請して下さい。

④学校水泳の監視体制

てんかん発作が絶対に起こらないという”悪魔の証明”を求められることがあります。てんかん発作を起こしたことがない人であっても、てんかん発作が起こる可能性は0ではありません。さらに言えば、水泳では誰でも溺れる可能性があり、水泳が得意なお子さんであっても起こりえます。

てんかんのお子さんの水泳授業を許可しない学校があります。「監視体制が不十分だから(許可できない)、多くの児童が一斉にプールに入るから(てんかん発作があっても気づくことができない)」という理由をお聞きします。てんかん発作に気づくことができない監視体制ということは、誰かが溺れたとしても気づくことができないということです。これを機に監視体制や安全管理を見直す機会にされてはどうでしょうか。上記の「学校における水泳事故防止必携2018年改訂版」では、「プール全体がくまなく監視できるよう施設の規模に見合う十分な数の監視員を配置することが必要である」と記載されています。

⑤合理的配慮

病気または障害のあるお子さんが、他の人と同じ様に教育や学校生活を送ることができる様に配慮すること(合理的配慮)が義務となっています。にもかかわらず、てんかんのお子さんが学校水泳に参加できない、親の見守りが強要される、などがいまだに平然と行われています。その様な学校では、事前に主治医に相談もありません。差別をしない様に教育すべき学校が、差別をしてしまっています。排除されたお子さんや家族はどう感じるでしょうか?

以前、てんかん患者のプール利用を禁止したスポーツクラブがあり、スポーツ庁から障害者差別解消法に違反する可能性があるとして見直すよう指摘を受けたことがありました「てんかんの方はプール不可」 外部指摘で会則改訂:朝日新聞デジタル (asahi.com)。同じことが学校では許されるのでしょうか?

⑥提案

実際にはほとんどの学校でてんかんのお子さんがプールの授業に参加させていただいています。校長先生が監視してくれているとお聞きしたこともあります。学校の先生方も様々な仕事がある中で、専門でない水泳の授業、監視を行い、ほとんど起こることのない緊急事態への準備や訓練など大変であることは想像に難くありません。リスクのあるお子さんの水泳を拒否する学校にも理由はあるのだと思います。それでも、その子のために十分に議論・配慮をした上での決定でしょうか。

てんかんといっても発作の症状や頻度は様々です。より大きな注意が必要なお子さんもいれば、ほとんど心配がないお子さんもいます。繰り返しますが、それまで健康だったお子さんでも突然溺れる可能性はあります。全てのお子さんにおいて、危険性は0か100ではありません。

また、本人や御家族も発作が起こりやすくならないように注意が必要です。薬の飲み忘れや不規則な生活とならない様にしましょう。

学校にとって、てんかんのお子さんがどの様な発作がどの程度起こる可能性があるのか、発作のときにどうすれば良いのか、事前に把握しておくことが重要です。これは水泳に限った話ではありません。学校への指示書でも良いのですが、文章ではなかなか理解しにくいものです。学校の先生方で、直接お話しをされたい場合には、御家族の了承を得た上で、クリニックまでご連絡下さい。御家族の許可が確認できましたら、お電話または面会にて直接お話しさせていただきます。てんかんのお子さんがより安全に、皆と同じ様に学校生活を送ることができる様、御協力させていただければ幸いです。

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