• 2025-11-22

インフルエンザと異常行動:タミフルは飲むべき?

引き続きインフルエンザが大流行中です。インフルエンザは高熱や長引く咳など、大変つらい感染症です。悪化して気管支炎や肺炎となることもあります。

インフルエンザは脳神経の症状を起こしやすいウイルスです。インフルエンザでは熱性けいれんをよく起こします。熱性けいれんは幼児期に起こることがほとんどですが、インフルエンザでは小学生でもけいれんすることがあります。日赤病院勤務時代には10歳前後のお子さんでもけいれんして救急受診されることがときどきありました。

インフルエンザでは異常言動や異常行動をしばしば引き起こします。高熱時に意味不明なことを言ったり走り出したりすることがあります。このような状態を”熱せん妄”といいます。熱せん妄は睡眠中に起こりやすく、急に起き上がって叫んだり動きまわったりします。熱せん妄は数分から15分程度でおさまり、通常は大きな問題がありませんが、まれに窓やベランダから飛び出して転落することもあります。そのため、熱のあるお子さんをおいて外出しない、窓のある部屋に寝かせない(窓がある部屋では窓を二重ロックする)など注意が必要です。

昔、タミフルが異常行動の原因ではないかと騒がれ、一時期お子さんに使用できなくなりました。我々小児科医は、当時から大きな違和感を感じていました。それは、タミフルを飲んでいないインフルエンザの患者さんでも、多くのお子さんが熱せん妄を起こして受診されていたからです。そしてタミフルを使用できなくなってからも熱せん妄のお子さんはたくさん受診されました。その後、異常言動や異常行動はタミフルのせいではなく、インフルエンザによる症状としてお子さんにもタミフルが使用できるようになっています。

しかし、今でもお子さんにタミフルを飲ませて良いかと質問されることがあります。そこで、最近アメリカから報告された研究結果をご紹介します(JAMA Neurol. 2025;82:1013-1021.)。5歳~17歳の69万人という膨大なデータを解析しています。インフルエンザでタミフルを飲んだ人と飲まなかった人で、精神・神経系合併症の発生率を比較しました。すると、タミフルを飲んだお子さんの方が精神・神経系合併症の発生率が約半分(リスク比0.53)に低下していました。この研究は観察研究のため、この結果だけでタミフルがこれらの合併症を減らすと結論づけることはできませんが、少なくともタミフルが悪者とは言えないでしょう。

タミフルはインフルエンザのつらい症状を減らすことはできるかもしれませんが、やはりかからないのが一番です。予防接種、マスク、手洗いなど、感染予防が重要です。

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