• 2024-03-24
  • 2024-08-13

風邪(かぜ)とは?

前回まで抗菌薬(抗生物質)のことをお話ししてきました。今回は風邪(かぜ)についてお話しします。皆さんの考える風邪と我々が考える風邪は同じではないかもしれません。そもそも風邪とは医学用語ではなく、一般用語です。我々医師が風邪というときは、通常急性気道感染症のことを指します。気道とは、鼻、のど、気管など空気の通り道のことで、そこにウイルスや細菌が感染した状態を急性気道感染症と言います。急性気道感染症の中に、感冒・急性鼻副鼻腔炎・急性咽頭炎・急性気管支炎が含まれます。

抗微生物薬適正使用の手引き第3版

この4つの病気は、どの症状が強いかで分類されています。鼻の症状が強い場合は急性鼻副鼻腔炎、のどの症状が強い場合は急性咽頭炎、咳が強い場合は急性気管支炎、どれも同程度だと感冒といった具合です。これら4つの病気は必ずしもはっきり区別できる訳ではなく、似た様な病気です。

抗微生物薬適正使用の手引き 第三版

①感冒:咳、鼻水、咽頭痛が同程度で比較的軽いものです。その他、発熱、頭痛、嘔吐、下痢などが出ることもあります。通常、ウイルス感染症であり抗菌薬は不要です。乳幼児では、平均で年6~8回感冒にかかり、年10回以上かかるお子さんもまれではありません。感冒に抗菌薬を使用しても症状は改善せず、重症化の予防効果もほぼありません。抗菌薬には下痢など副作用のデメリットがあるため、使用は推奨されていません。高熱が続く場合などは、細菌の二次感染が起こってきていないか評価する必要があります。

②急性鼻副鼻腔炎:副鼻腔炎と同じものです。副鼻腔炎では、鼻の炎症も伴うことがほとんどのため、鼻副鼻腔炎と言います。乳幼児では、感冒と区別することは難しく、また区別する意義も少ないとされています。つまり、乳幼児では感冒と同じ対応です。黄色や緑の鼻水は、細菌感染という訳ではなく、ウイルス感染でも出ます。細菌性鼻副鼻腔炎であっても、半数は1週間で自然治癒します。小学生以降では、重症または長引く鼻副鼻腔炎で抗菌薬使用が推奨されています。

③急性咽頭炎:咽頭痛が強く、咳や鼻水があまり出ません。約90%はウイルス感染です。細菌は溶連菌がメインです。溶連菌検査が陽性の場合、抗菌薬を飲みます。ただし、溶連菌の診断は難しく、溶連菌検査陽性=溶連菌感染症ではありません。本当はウイルス性咽頭炎なのに溶連菌感染と診断されている人はかなり多くいるはずです。溶連菌は難しいため別のブログでお話しします。

④急性気管支炎:咳がメインの症状です。やはり乳幼児では、感冒や急性鼻副鼻腔炎との違いははっきりしません。肺炎は、呼吸症状が悪化して呼吸が速くなったりレントゲンで肺炎像があったりするものですが、こちらも連続したものであり明確に区別することはできません。通常はウイルス感染で抗菌薬は不要です。感冒同様、発熱が続く場合には細菌の二次感染に注意します。また、肺炎となり、酸素投与が必要であれば入院が必要となります。

いずれの場合も、症状が出てすぐに抗菌薬が必要となることはほとんどありませんが、年齢や状態、持病に応じて、必要なタイミングで必要な検査をしながら抗菌薬を投与するかどうかを考えていくことになります。発熱やその他強い症状が続く場合には、こまめに受診していただければと思います。

参考:抗微生物薬適正使用の手引き第3版

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