• 2025-02-27

抗原検査

少しずつ春が近づいてきました。インフルエンザは年末に大流行しましたが、年明けから急速に減少し、現在は週に1~2人程度です。ウイルス性胃腸炎(嘔吐下痢症)のお子さんはやや多いですが、色々なウイルスのかぜのお子さんがいらっしゃいます。

さて、近年様々な病原体の抗原検査ができるようになりました。インフルエンザウイルス、新型コロナウイルス、溶連菌、マイコプラズマ、アデノウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ロタウイルス、などなど増える一方です。

最近発熱すると、抗原検査をするのが当たり前という風潮があります。クリニックによっては発熱するといきなり何種類も同時に検査されているところもあるようです(うちでも必要があれば2種類検査することはありますが稀です)。最近、診察がはじまる瞬間から、検査されるではないかと鼻を抑えて泣いて暴れるお子さんをよく見かけます。小児科はお子さんの味方のはずですが、これで良いのでしょうか?

検査は、その結果によって本人にメリットがある場合に行うべきです。例えば、発熱から48時間以内にインフルエンザと分かれば、インフルエンザのお薬で1日程度早く熱が下がります。最近だと、RSウイルスやヒトメタニューモウイルス、アデノウイルスなどがある程度流行っていますが、これらが検査で分かったとしても、治療法は変わりません。かぜの原因がヒトメタニューモウイルスだと分かって、何か良いことあるでしょうか?ちなみにヒトメタニューモウイルス抗原検査の本来の保険適応は、「6歳未満で画像診断または胸部聴診所見により肺炎が強く疑われる患者」です。

また、検査が正しい答えを教えてくれるとは限りません。感染者が陽性になる確率(感度)は50‐80%程度です(病原体やキットによって違います)。また、適切なタイミングで検査しないとかなり低くなります。そのため、検査で陰性でもその病気でないとは言えません(偽陰性)。また、感染していないのに、陽性になることもまれにあります(偽陽性)。特にややこしいのは溶連菌です。お子さんの10-20%は喉に住み着いていますので、陽性であっても発熱の原因ではないことが多々あり、検査したために溶連菌感染症と間違って診断され不要な抗菌薬を飲まされている方は割といらっしゃいます。溶連菌についてはくわしくは過去記事をご参照ください溶連菌検査にご注意 – たかみこどもクリニックブログ

診療においては、症状の経過や診察所見でご本人の状態を判断することが最も重要です。検査するかどうかは、診察をした上で、その感染症の可能性があり、かつその結果によって本人に何らかのメリットがある場合に行います。検査すべきかどうかと検査結果の解釈は意外とむずかしいのです。最近、「検査を受けてこい」という保育所が一部あります。検査が必要ないことをご説明して検査しないことも多いですが、ご両親も保育所に検査のことを言われるからと困っておられます。何より必要のない痛い検査をされるお子さんが一番かわいそうです。「検査を受けてこい」ではなく、「診察を受けてきてください」と言っていただけるとありがたいです。

新型コロナが5類感染症となり、もうすぐ2年となります。小児科に入った瞬間に泣いたり鼻をおさえたりするお子さんが減ってくれることを期待しています。

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