• 2024-09-16

インフルエンザ点鼻ワクチン(フルミスト®)について

今年度から、鼻に投与するタイプのインフルエンザワクチン(フルミスト®)が使用可能となります。特徴や注意点、注射ワクチンとの違いについて御説明します。

①投与方法:点鼻タイプは、両方の鼻の穴に0.1mLずつの液体を投与します。

②年齢:点鼻タイプは、2歳~18歳(19歳未満)が対象です。

③接種回数:点鼻タイプは1回です。但し、過去にインフルエンザワクチンを接種したことがない場合やインフルエンザにかかったことがない場合、1回の接種では効果が低い可能性があります。

④痛み:点鼻タイプの方が痛くありません。

⑤接種料金:点鼻タイプの方が高額です。自費診療のため、価格はクリニックによります。

⑥予防効果:点鼻タイプと注射タイプの有効性は概ね同等と考えられています。国内で効果を直接比較した研究はありません。海外の市販後調査での限られた比較しかありません。小児科学会も効果の優位性は確認されていないとしています経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方 (日本小児科学会)

⑦ウイルス株:点鼻と注射とでは入っているウイルス株の種類が異なりますが、どちらもA型・B型に対応しています。

⑧効果発現:どちらも、接種後2週間で効果が現れます。

⑨副反応:点鼻タイプでは、注射タイプの様な注射部位反応(腫れや発赤、痛み)はありません。弱毒化されていますが、鼻粘膜で増殖するため、鼻汁や発熱などのかぜ症状が出ることはあるようです。但し、臨床試験においては点鼻ワクチン投与群とプラセボ(ワクチン非投与)群で、これらの出現割合には差がありませんでした(表)。

国内第Ⅲ相試験における有害事象:第一三共

⑩注意点
【妊婦や乳児のいる家庭】点鼻タイプは生ワクチンのため、接種後しばらくは鼻腔内に弱毒化されたウイルスが存在します。飛沫または接触によりワクチンウイルスが家族などにうつる可能性があります。添付文書では、ワクチン接種後 1〜2 週間は、重度の免疫不全者との密接な関係を可能な限り避けると記載されています。妊娠中の方はフルミストが接種できません。2歳未満では点鼻ワクチン投与した方が入院率が上昇することから接種対象外となっています。妊婦や2歳未満のお子さん、免疫不全の方のいる家庭では、点鼻タイプを接種しない方が良いでしょう。
【喘息のある方】喘息がある方は、点鼻タイプを接種することで喘息発作が起こる可能性があります。小児科学会でも喘息のあるお子さん(特に幼児)は、注射タイプが推奨されています。
【アスピリン内服中】インフルエンザ感染時に主にアメリカでライ症候群という病気との関連が指摘され、インフルエンザ感染時にアスピリンを使用しないことが一般的となっています。そのため、アスピリン内服中の方は、併用注意となっています。ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸も同様ですが、少なくとも小児科で処方されることはほぼ無くなっています。
【抗原検査(PCR検査)が陽性となる】点鼻ワクチンは生ワクチンのため、接種後鼻腔内でウイルスが増殖し、しばらくの間はインフルエンザの抗原検査やPCR検査などを受けてしまうと陽性になってしまいます。また、通常ワクチン株かどうかを区別できません。つまり、点鼻ワクチン接種後早期に発熱などインフルエンザを疑う症状が出た場合、安易に抗原検査を受けてはいけません。ワクチンに詳しくないクリニックに受診すると間違った診断を受ける可能性がありますので、ご注意下さい。点鼻ワクチンを接種される場合、インフルエンザが流行しないうちに、10月になったらできるだけ早く接種しておくことをお勧めいたします。

【点鼻ワクチンを接種ができない方】
・発熱がある方
・重篤な急性疾患にかかっている方
・点鼻ワクチンの成分でアナフィラキシーを起こしたことがある方
・免疫機能に異常がある、免疫抑制をきたす治療を受けている方
・妊娠している方

【当院で点鼻ワクチン接種をお勧めしない方】
・点鼻接種でも大泣きする可能性がある方(注1)
・過去インフルエンザワクチンを接種したことがない(注2)
・喘息のある方
・同居者に、重度の免疫抑制者、妊婦、2歳未満のお子さんがいる方
・ゼラチンでアナフィラキシーを起こしたことがある方(注3)
・アスピリン、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸を内服中の方

注1:生ワクチンのため、少量でも接種されれば効果はあると考えますが、ご了解の上でご予約下さい

注2:インフルエンザワクチン未接種でインフルエンザにかかったことがない場合は、効果が弱いと考えられています。

注3:ゼラチンがワクチン内に含有されています

たかみこどもクリニック 079-226-3200 ホームページ